【全容整理】台北駅・中山駅周辺の無差別襲撃事件 容疑者単独犯行か、動機解明へ

現時点での事件に対する呼称は「2025年台北捷運無差別攻擊事件

事件の概要

2025年12月19日17時半頃、台北駅地下街及び中山駅周辺の繁華街で、刃物や煙幕弾、火炎瓶を使用した無差別襲撃事件が発生した。
衛生福利部などの集計によると、死者3人・負傷11人に上り、うち2人は集中治療室で治療が続いている。台湾社会に大きな衝撃が広がった。

 

犯行の時系列(判明分)

  • 事件の時系列

    時刻 場所 事件内容
    15:40 中山区・林森北路119巷 住宅1軒に放火
    15:54 中山区・長安東路一段75号、林森北路159巷 路上に駐車していた自動車1台、バイク2台および雑物を放火で焼失。YouBikeに乗って賃貸住居へ戻る
    16:53 公園路20巷の賃貸住居 衣服を着替え、賃貸住居に放火
    16:59 台北駅M8出口 台北MRT台北駅M8出口に進入
    17:23 台北駅M7・M8出口付近の地下通路 煙幕弾を投擲し、ナイフで通行人を襲撃。1人死亡・5人負傷。その後、中山地下街を通って中山駅方面へ逃走
    17:55 千慧旅館 中山駅前にある宿泊中のホテルへ戻り、着替えと凶器を補充
    18:31 千慧旅館 宿泊中のホテルを出る
    18:37 中山駅前及び誠品生活南西店入口 再び煙幕弾を投擲し、刃物で無差別に通行人を切りつけ、2人死亡・6人負傷
    18:40〜18:50 誠品生活南西店内 1階・4階で刃物による襲撃を継続。警察に包囲される中、装備を脱ぎ屋上へ上がったのち転落
    19:42 国泰総合病院 救命処置の末、死亡を確認

被害者

性別 年齢 身分 傷勢 襲撃場所・状況
57 証券業 到着前心肺停止(OHCA)。鋭利な刃物が右肺葉から左心房を貫通し、出血性ショックで死亡 台北駅M7・M8出口間で犯行を阻止しようとして刺され死亡
37 バイク運転手・警備業 OHCA。頸部の刺創により死亡 中山駅前の道路で赤信号待ち中に首を刃物で刺され死亡
37 来店客・銀行業 OHCA。右腹部の刺創により肝臓破裂、失血多量で死亡 誠品南西店内4階で腹部を刺され死亡
54 MRT職員 初期消火時の煙吸入。意識は清明 台北駅M7・M8出口間
32 来店客 頸部切創(1cm超)。集中治療室入室 誠品南西店内4階
23 受付係 右胸部刺創。集中治療室入室 誠品南西店内4階
56 来店客 左手負傷、肩部切創 誠品南西店内1階
49 来店客 左顔面・下顎の裂傷 誠品南西店内3〜4階
自力受診6人 軽傷(台北駅内4人、中山駅付近1人、誠品南西店内1人で負傷) 各現場

容疑者

警察が特定した容疑者は、桃園市楊梅区出身で無職の張文(27)。永平工商餐飲科から国立虎尾科技大学情報工学科に合格。同級生の証言によると、成績優秀で、高校時代は人助けをする親切な人物だったと報じられている。
大学卒業後には空軍の志願兵として勤務するが、2022年に休暇中の飲酒運転が発覚し除隊処分。その後台中市内で警備員として勤めたが、近隣住民らと衝突し解雇されている。
また兵役招集に関し、住所変更未届の違反により2025年7月から指名手配されていた。

被害の内訳と医療対応

  • 医療機関によると、被害者の死因はいずれも鋭利な刃物による穿刺傷に伴う出血性ショックが中心で、爆発による致命傷ではない

  • 台大病院、馬偕病院、新光病院などが負傷者を受け入れ、緊急手術や集中治療を実施

  • 衛生福利部は、負傷者のうち1人がHIV感染者であると公表したが、長期治療によりウイルス量は検出限界以下で、感染リスクは極めて低いと説明
    必要に応じ72時間以内の予防投薬(PEP)相談を案内

捜査の進展

  • 単独犯行と認定。現時点で共犯は確認されていない

  • 容疑者は少なくとも1年8カ月前から犯行を計画事前の現地踏査、変装(5回)、凶器等の分散保管を行っていた

  • 宿泊先や賃貸住居から多数の火炎瓶、ナイフ、マスク・防護具、タブレット端末などを押収

  • 2台のタブレットから犯行計画の記録が見つかり、デジタル履歴・金流・人間関係の解析を継続

  • 検察は遺体の解剖を予定し、動機解明を急ぐ

政府・自治体の対応

  • 賴清德・総統は警政署を訪れ、全面的かつ広範な調査を指示。医療・心理ケアの長期支援体制整備を求めた

  • 蔣萬安・台北市長は、台北駅地下街で犯行を阻止しようとして亡くなった男性の遺族に対し、少なくとも500万元の補償を表明。褒揚状の授与忠烈祠への合祀申請記念碑設置も検討

  • 台北市警は1日1000人超の警力を投入し、駅・商業施設・大型イベントでの巡回と長銃携行警力の配置を強化

  • 全台でクリスマス・カウントダウンなど年末年始行事の警戒水準を引き上げ、模倣犯抑止に注力

社会的反響

  • 事件現場には献花やカードが相次ぎ、市民が犠牲者を悼んでいる

  • 現場で避難誘導に当たった店舗スタッフや医師らの行動に称賛が集まった

  • 一方、SNS上での模倣・脅迫的投稿への警戒も高まり、検警は厳正対処を表明

今後の焦点

  • 動機の最終解明(思想・個人的要因、計画の背景)

  • 危険物の流通管理駅・繁華街の安全対策の検証

  • 被害者・遺族への長期支援、市民の心理ケア

※本稿は、警察・検察・医療機関・政府発表および主要報道を基に、2025年12月21日時点で判明している事実を整理したもの

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