今回は前回に続き、「陰陽五行説」から生まれた基本色の概念と、生活への影響についてお話ししましょう。
日本における基本色の概念は明暗顕漠の「アカ」、「クロ」、「シロ」、「アオ」、の4色となっています。一方の中国の色は、青、赤、白、黒にこの黄色を加えた5色。「天地玄黄」という言葉では、天の色が黒であるのに対して、大地の色は黄色とする記載もあり、また「黄河」、「黄帝」、「黄門」など中国では最上のものを表す言葉に黄色が使われていることが多く、皇帝の衣服の色にも定められています。これらを比較すると、日本に対して古代中国では「黄」が重要な位置を占めていたのがわかります。
前回お話しした通り、紀元前350年頃、中国の思想家が提唱した「陰陽五行説」が仏教、儒教とともに日本に渡来したのは6世紀末頃。国家経営の基本として取り入れられました。その後、聖徳太子はこの五行思想にしたがって、官吏の位ごとに冠の色を定めた冠位十二階を制定しています。
「陰陽五行説」はさらにその後も仏教と習合しながら、民俗催事に取り入れられ、日本の生活文化の中で定着していきました。たとえば寺院の祭祀や能舞台に掲げられる五色幕、端午節や七夕など五節句の祝い事、大相撲で土俵の四方に下げられる四色の房、正月のおせち料理、五色豆などです。
これが現代の生活にも生きている「五行思想」のルーツ。身近な生活の中にすっかり溶け込んだ伝統色は、こうして生まれたのです。