立法院で5月28日(火)、国会の権限を拡大する改革法案の決議が行われ、賛成過半数で可決された。
法案は野党の国民党と民衆党が共同で提出。大きな争点は①総統の国家報告、②調査・閲覧権の行使、③国会侮辱罪の制定、④人事同意権の修正、の4点で、①は総統に対し立法院での定期的な政治報告と即時答弁を要求するもの、②は「調査権の行使」と「公聴会の開催」が新設され、議員が資料を調閲し関連する人物を尋問する権限が明確に定められる。民進党はこの調査範囲が民間企業にも及び、個人情報や企業の機密を侵害する可能性を指摘している。
また③は国会で官員が反対尋問や資料提供の拒否、虚偽回答などの行為をした場合、また議長の制止にもかかわらず違反を続けた場合に処罰されるもので、その定義が不明瞭であることが問題視されている。さらに④の人事同意権は立法院が行使する際、討論を経ず1カ月以上の審査と記名投票によって可決され、これが立法院の人事権を大幅拡大させる恐れがある。
改革法案は与党・民進党の議席数51に対し国民党52席と民衆党8席の計60席が連携し賛成多数となったが、行政院は法案の「再議」を提案する予定。再議は行政院のみが提出できるが「釈憲」は立法院の民進党議員、総統府、行政院、監察院も請求可能。ただし、総統が正式な法案として公布した後にのみ釈憲を請求できる。
立法院周辺では一般市民らが連日の抗議行動を展開。「議論なくして民主はない」とのスローガンを掲げ白熱化している。
台湾では、日本の特定秘密保護法に当たる情報漏えい防止の法整備が行われていない。政府関係者の間では「台湾が自主開発した潜水艦や、半導体の機密情報が野党を通じて中国に漏れやすくなる」と懸念する声が上がっている。
民進党は、法案について、憲法が定める立法院の権限を逸脱すると主張。審議の継続を求めたが、野党の賛成多数で法案は可決された。
法案の可決を受け、卓栄泰・行政院長は声明を出し「(法案の)内容に憲法上の論争がある」と指摘し、再審議を求める方針を示した。卓氏は29日、立法院を訪れ、国民党の韓国瑜・立法院長(国会議長)と会談。再審査に応じるよう働き掛けたとみられる。
民進党は世論に法案反対を訴える一方、成立後に司法院大法官会議(憲法裁判所)に違憲審査を求める構えだ。
(5月29日)