台北MRT事件、捜査終結 「存在を示すための表出的犯罪」

 昨年12月、台北市中心部で発生した無差別殺傷事件について、台北地方検察署は1月15日(木)、捜査を終結したことを発表。被疑者の張文容疑者は犯行後に死亡しており、検察は法律に基づき不起訴処分とした。@自由時報
検察によると、張容疑者は路上に発煙弾や火炎瓶を投げ、刃物で通行人を無差別に襲撃した後、建物から転落して死亡。捜査の結果、政治的・宗教的な背景や共犯者の存在は確認されず、単独犯と断定された。
検察は会見で、容疑者の動機を「自己の存在を確認・誇示するための『表出的犯罪』」と説明。監視カメラ映像や関係者への聞き取りなどを分析した結果、犯行は緻密に計画されたもので、社会に衝撃を与えること自体が目的だったと結論づけた。特に注目されたのは、容疑者が犯行後、宿泊先に戻り、自身の犯行に関するニュースをネットで検索していた点で、検察は、これは警察の動向把握にとどまらず、「社会的注目を得ているかどうか」を確認する意図が強かったとみている。
検察の分析では、容疑者は制度化された職場環境に適応できず、長期にわたり社会的孤立状態にあった。家族との関係もほぼ断絶していたとされ、社会との繋がりを失った状態が反社会的行動を強めたと判断された。精神医学の専門家は「単なる犯罪として片付けるのではなく、社会と家庭の構造的な歪みを映し出す鏡として受け止める必要がある」と指摘。医師によれば、容疑者は成長過程で否定的なレッテルを貼られる「ラベリング(標籤化)」による心理的傷害を受け、強い自己否定感を抱くようになった可能性がある。心理学的には、物事を「全か無か」で捉える二分的思考が強まると、自身を「価値ゼロ」と見なしてしまい、社会への反発や極端な行動につながりやすいという。
また再発防止に向け、「社会全体で〝沈黙の助けを求めるサイン〟を読み取る力が必要」と訴える。長期的な引きこもり、連絡への無反応、急激な性格変化などを挙げ、多様な価値観を認める姿勢が重要だと強調した。
また単純な成功観を社会が見直し、周縁化された人々への心理的支援を強化することで、「孤立した個人の心の冷え」を和らげることができ、今回の事件は社会的孤立への対応という課題を改めて浮き彫りにしたと指摘している。
(1月19日)

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